渋谷系バンドのオリジナルラブのデビューアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」を聴いてみる
こんちは、NULLです(^^♪
今回は1991年にリリースされた彼らのデビューアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」を紹介する。
前年の1990年にピチカートファイブを脱退した田島貴男は、このアルバムを同時期に並行して活動していたオリジナルラブの集大成と位置付けてリリースした。
「BODY FRESHER」や「ORANGE MECHANIC SUICIDE」,「DARLIN’」は、インディーズ時代の1988年にリリースした「ORIGINAL LOVE」にも収録されているが、メジャーデビューを機に再びリアレンジされた。
また、ピチカートファイブ時代に歌われた「夜をぶっとばせ」も新たなアレンジでセルフカバーされた。
アルバム全体はジャズだったりスカだったり。バートバカラックや同時期に活躍したイギリスのラテンバンドの「マット・ビアンコ」やポール・ウェラーのバンド「スタイルカウンシル」に傾向はとても良く似ている。(決してオマージュやパクリがあるということではない。あくまで音楽の傾向として。)
代表的なナンバーを解説すると、
「BODY FRESHER」はドライブ感満載のジャズビート。間奏での村山のジャンゴラインハルト風の軽快なジャズギターは必聴。
「DEEP FRENCH KISS」は初期渋谷系(とはいえまだその言葉は使われていなかった。)の代表曲といってもいい。ハモンドオルガンの音色は渋谷系を特徴づける要素の一つになっている。
「FAT LOVE STORY」はバートバカラックの「Look of Love」風の楽曲。彼のバカラック愛はピチカート・ファイヴ時代のアルバムにも表れている。
「夜をぶっとばせ」はピチカート・ファイヴの3rdアルバム「女王陛下のピチカートファイブ」に収録されていたが、セルフカバーした。今回のアルバムでは、前者のホーンセクションアレンジはなく、アダルトコンテンポラリーなアレンジとなっている。
「LOVE VISTA」は、およそ12分にも及ぶオリジナルラブの中で最も長いナンバー。半分「歌モノ」、半分「インストゥルメンタル」である。けだるそうに繰り返されるリズム隊の重低音に、田島の胸が張り裂けるようなファルセットが曲全体にある種の緊張感をもたらしている。
何かが爆発しそうな気がする。
しかし、何の劇的な展開もなく、消え入りそうな木原のピアノの旋律が繰り返され、曲はひそかにクライマックスを迎える。
オリジナルラブが他の渋谷系グループと一線を画していた理由はこの曲にあると言ってもいい。
オリジナルラブのメンバーの演奏能力もさることながら、何か近づきがたい凄みのようなものがあるのだ。(最近シティポップスをにぎわせているサチモスもそれに近い雰囲気があるが、オリジナルラブはもっと凄かった。)
田島は以前、オリジナルラブを渋谷系に括られるのを嫌がっていた。(今はそうでもないようだが。渋谷系のお洒落なイメージは後期になって生まれたもので、初期は「渋谷の宇田川町の外資系CDショップを中心とした半径数百メートルで流通する音楽」(音楽評論家・田中宗一郎)と揶揄されていた。)
今となってはその真意もよくわかる。
何かに括られたくない、カテゴライズされたくない。
ジャズ、ソウル、ロック、様々な音楽の影響を受けながらも、そこから新しい音楽を生み出そうとした彼らなりのプライドがこのアルバムから垣間見えるのだった。
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